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ブログ - ≪曹渓庵佐々木指月老師のこと≫ (7) 閑徹

≪曹渓庵佐々木指月老師のこと≫ (7) 閑徹

カテゴリ : 
ブログ
執筆 : 
Kakuken 2020/4/19 22:44
(7)指月のアメリカ観
 事のついでにという言葉から始まって、空穂は当時のアメリカが指月の目にどう映っていたかということについても、次のように記している。
 
 【相対しての雑談の際である。私は“佐々木君、君はもうどれくらいアメリカに居たら、あの国の中流の者になれると思う?”
“そうだなあ、ぼくの子供がすばらしく出来が良くて、それから、その子がまた、すばらしく出来がよかったら、あるいは中流まで経上がれますかねえ。条件付き、三代はかかるな”
“どういう意味なんだ?”
“アメリカは自由主義の国だなんて言うのは、地方の人が金を持って東京見物に来、三越と帝劇だけ見て帰って、東京のきれいさを話すのとおなじですよ。アメリカで働いて食っていて見ると、あんな階級的な国はない。アメリカの政治界は、全部、最初に移住して来たイギリス人で、それ以外の者は一人も無い。ホテル・レストランを経営しているのは、ドイツ人です。それ以外の者は割り込めない。その次の広い技術・芸術で生活している者は、イタリー人フランス人、あるいはスペイン人です。そうきめて、間違いない。最後は黒人です。われわれ日本人はというと、その黒人のちょっと上で、そして黒人に同情されているというのが現状ですよ。その階級観念は、同僚で、月収が同額な、少数の範囲の者だけで、それ以外の者とは決してしない。ぼくが月収百ドルで、家庭訪問をしたいと思う男が百五十ドルがと、容易に許されない。ただ一度、晩餐に招いて、家族と会食をするのが、許諾の意思表示だが、しないなあ!”
“じゃあ、交際の場所ってものは無いのかい?”
“それはありますよ。どんなけちな町にも、必ず倶楽部があって、紹介者があって会費を納めると、会員になれますよ。紅茶やコーヒーぐらいは飲める。時間の制限がなくて、いつでもふらりと行くと、誰かしら知人がいて、無ダ話をたのしむのです。ここには規約があって、その規約は全倶楽部を通じての不文律になっていて、違反するものがあると即時除名するという厳重なものです。その一つは、決して会員のアドレスを訊かないこと、これは訪問を防ぐためです。今一つは、決して会員の男女関係に関しての噂は口外しないことです。これは大部分の会員は凶状持ちで自己防衛のためのものです。男女関係には説明が入る。アメリカでは人権尊重の意味から、妻が友人だと称している男には、夫は絶対に干渉することができないのです。内情はわかりきっている。夫は、しゃくにさわる所から、復讐気分で他人の妻と友人関係を結ぶ。これが実に多い”】
 これが当時指月の属していた階級、すなわち黒人より一段高い階級の生活状況であり、空穂には耳新しいものであったと記されている。
 また、指月の書信には、時に熱意をこめて感想を叙して来るものがあり、その中の一つに、
 
【アメリカの国民は、臨済禅など会得するに堪える国民ではない。気が若くて、空想的で、ただはしゃぎまわっているだけの国民だ。とても思惟的で、哲学的な禅など、受け入れられそうも見えない。その具体的な現れが、アメリカの教会堂と日本の寺院だ。ここの教会堂はゴチック型の尖塔で、細く高く、天に向かって伸びられるだけ伸びようとしている。内部に入ると、十字架上の基督が、これまた苦しい顔をして天を仰いでいる。
日本の寺院は、おもおもした屋根が、地に着こうとするように垂れ下がっている。仏像は足を半跏に組み、眼を伏せて思惟をしている。これだけを比較してみても、両国民の情念の相異がはっきり感じられる】

というのがあり、空穂はその比喩の面白さが忘れられずにいると云っている。
そしてアメリカに対する臨済禅の布教の可能、不可能ということが、指月の念頭を深く去来している事を感じたというのである。
 

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