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ブログ - 溶鉱炉は現代物理学の揺籃

溶鉱炉は現代物理学の揺籃

カテゴリ : 
ブログ
執筆 : 
茨城座禅会 2018/11/5 2:27
水戸支部 松風です。

人間禅茨城支部30周年記念行事の一環として、新日鐵住金の鹿島製鐵所見学に参加しました。
 
溶鉱炉内のオレンジ色に光る溶けた鉄を見ていた時、約120年前のドイツで起きた科学史上革命的な出来事を思い出しましたので、ご紹介します。
 
19世紀後半のドイツでは近代産業の基幹として製鉄業が飛躍的に成長しました。
 
良質な鉄を作るには溶鉱炉内の鉄の温度管理が必要ですが、当時は数千度の高温を測れる温度計は存在しませんでした。
そこで、熱した鉄が放つ光の色と鉄の温度の関係を理論的に正確に知りたいという要請が科学界へ出されました。
 
ところが、当時の古典物理学における「光は波であり、そのエネルギー量は連続的に変化する」という強固な既成概念では溶鉱炉内で起こっている現象を全く説明できなかったのです。
 
そこに登場したのが「量子の産みの親」プランクです。
 
彼は、光のエネルギーを1個、2個と数えられる小さな固まり、いわば粒のようなものとして「量子仮説」を提案しました。
量子仮説によりますと、光のエネルギーの基本単位量をXとしますと、そのエネルギー量はX、2X、3X 、、、と、飛び飛びに変化します。
量子仮説をもってすれば、熱した物体が放つ光とその温度の関係を見事に説明出来たのです。
 
「どこが画期的なんだ」と思う方もいるかも知れません。
しかし、海の波だったらイメージ出来ますよね。波が物体にぶつかる時に及ぼす力の効果であるエネルギーが、1個、2個と数えられる量だなんて、何か変に感じられませんか?
120年前の物理学者たちにとっては、もっと違和感があったと思います。
後で詳しく説明しますが、理論的にも実験的にも「光が波」であることは動かしがたい事実だったのですから。
 
そして、プランクが量子仮説を提出した5年後、量子の概念はあの大天才物理学者を通じて、それまでの科学をひっくり返す大事件へと発展していくのです。
 
当時の物理学者たちを悩ましていたもう1つの大きな問題は「光電効果」でした。紫外線などの振動数(波が1秒間に上下のサイクルを繰り返す数)の大きい光を金属に当てると金属から電子が飛び出す現象です。
これも、「光は波」とすると説明し難いものでした。
 

疑問点はいくつかあったのですが、その内の1つは比較的理解し易いので、少し説明してみます。
 
光電効果には「限界振動数」というものがあります。
ある一定の大きさ以上の振動数の光でないと電子が飛び出さない、その最小の振動数のことです。
しかし、光が波とするとこれはおかしなことです。
 
海の波を考えてみれば理解し易いですが、波のエネルギーの大小は波の高さ(これを物理用語で振幅といいます)に依存するはずです。
ところが、光電効果が起こるか起こらないかは振幅には関係なく、振動数のみに依存するのですから、当時の物理学者たちは頭を抱えてしまった訳です。
 
そこに登場したのが、あのアインシュタインです。
 
結果だけを簡単に説明しますと、アインシュタインはプランクの量子仮説からヒントを得て「光は粒である」として、光の粒1個(光子)が電子1個をはじき飛ばすとする「光量子仮説」を提出しました。
この説をもってすれば、光電効果に関する全ての謎を見事に説明出来たのです。
 
今でこそ「そんなに革命的なことかな?」と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、当時は、「ヤングの光の干渉実験」や「マックスウェルの電磁方程式」によって、上記のように、理論的にも実験的にも光が波であることは「疑いようもない」事実だったのです。
 
後にアインシュタインの光量子仮説を実験で証明したアメリカの物理学者ミリカンでさえ当初は、「アインシュタインの説は『光を粒とする』ゆえに、人々に受け入れられないだろう」と述べたそうです。
 
相対性理論で有名なアインシュタインですが、1921年にノーベル物理学賞を受賞したときの最大の評価ポイントは「とくに光電効果の法則の発見に対して」でした。
 
その後、アメリカの物理学者コンプトンの「X線の電子による散乱」実験の成功により「光の二重性(波でもあり、粒でもある)」は不動のものとなり、古典物理学はその限界をはっきりと露呈したのでした。
 
難解な量子の世界ですが、その理論の応用である半導体の使用により、皆さんお持ちの携帯電話やパソコンは飛躍的に手軽なものになりました。
 
また、遺伝子の構造や原子力発電の核分裂反応にも、量子は大きく関係しています。
 
このブログで、少しでも量子の世界を身近に感じて頂けましたら幸いです。
 
もっと詳しく知りたい方は、「量子論を楽しむ本」(佐藤勝彦監修、PHP文庫)など佐藤勝彦氏の一般向けの本が、難しい数式を使わずに平易に書かれていてお勧めです。  

 

 
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